平成26年4月1日以降に作成される「金銭又は有価証券の受取書」に係る
印紙税の非課税範囲が拡大されます。
具体的には、現在、3万円未満のものが非課税とされていますが、
平成26年4月1日以降については、5万円未満のものが非課税とされます。
飲食業の場合、領収書等を発行する機会が多いので注意が必要となります。
■「金銭又は有価証券の受取書」とは、
金銭又は有価証券を受領した者が、その受領事実を証明するために作成し、
相手方に交付する証拠証書をいいます。
具体的に主なものは、
@領収証 A領収書 Bレシート
C請求書や納品書等に「代済」・「相済」・「了」などを記入したもの
青色申告の手続き方法について(飲食店)
(Q)個人事業を「本業」とする場合の手続きはどうすればよいのか?
(A)
1.個人事業を本業とする場合には、個人事業を開始した日から1ヵ月以内に
「個人事業の開業届出書」を住所地の所轄の税務署に提出しなければならない。
2.確定申告の申告方法には、「白色申告」と「青色申告」の2種類の方法があります。
@ 税務署に「青色申告承認申請書」を提出していない場合には「白色申告」です。
A 税務署に「青色申告承認申請書」を提出している場合には「青色申告」です。
「青色申告承認申請書」の提出期限
@ その年の1月15日以前に、新たに事業を開始した場合には、 その開始の日の属する年の3月15日まで。 A その年の1月16日以後に、新たに事業を開始した場合には、 その開始の日から2ヵ月以内。
(例)H31.4.9にフリーランスとして事業を開始する場合 → H31.6.8までに提出 B 白色申告者が当年度から青色申告の承認を受けようとする場合には、 承認を受けようとする年の3月15日まで。
(例)「白色申告者」が平成31年から「青色申告者」となる場合
→ H31.3.15までに提出
|
青色申告の節税シミュレーション(飲食店)
個人事業主が白色申告から青色申告に変更した場合(飲食店:35歳の場合)
■消費税は課税事業者 ■青色申告特別控除(65万円を適用)
■所得控除は未対応 ■消費税率は10%として設定
令和5年 |
白色申告の場合 |
青色申告の場合 |
売上高 |
26,400,000 |
26,400,000 |
経費金額(70%) |
△18,480,000 |
△18,480,000 |
利益金額(30%) |
7,920,000 |
7,920,000 |
消費税額(簡易課税:第4種) |
△960,000 |
△960,000 |
青色申告特別控除額 |
0 |
△650,000 |
最終利益金額 |
6,960,000 |
6,310,000 |
■納付すべき税金
令和5年 |
白色申告の場合 |
青色申告の場合 |
消費税 |
960,000 |
960,000 |
所得税 |
964,500 |
834,500 |
個人住民税 |
696,000 |
631,000 |
個人事業税 |
203,000 |
203,000 |
国民健康保険 |
661,200 |
599,450 |
国民年金 |
196,920 |
196,920 |
合計額 |
3,681,620 |
3,424,870 |
飲食店の「まかない」の会計処理
(Q)近い将来、飲食店を開業する予定ですが、
私と従業員の「まかない」について経理上、留意する点をご教示ください。
(A)役員や使用人に支給する食事は、次の全ての要件を満たす場合には、
給与として課税されません。
@ 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担している。
A 1ヶ月当たりの金額※が3,500円以下であること。
※(食事の価額) − (役員等が負担する金額) ≦ 3,500円
B @及びAの要件に該当しない場合には、
上記で計算した金額が「給与」として課税の対象となります。
C 食事の価額とは、以下の金額をいいます。
・仕出し弁当などを取り寄せて支給している場合には、業者に支払う金額。
・社員食堂で会社が作った食事を支給している場合には、
食事の材料費や調味料など食事を作るために直接かかった費用の合計額。
(その他)
■ 現金で食事代の補助をする場合には、深夜勤務者に夜食の支給ができないために
1食当たり300円以下の金額を支給する場合を除き、
補助をする全額が給与として課税されます。
■ 残業や宿直や日直を行うときに支給する食事は、
無料で支給しても、給与として課税しなくてもよいことになっています。
個人飲食店が税理士等に支払う報酬等に対する源泉徴収義務
個人飲食店が税理士や弁護士・社会保険労務士等に対して報酬等を支払う場合には、
報酬等に対して所得税を控除した金額を支払います。
所得税を報酬等から控除することを「源泉徴収」といいます。
ただし、下記に該当する場合には報酬等に対して「源泉徴収」をする必要はありません。
@ 税理士法人・弁護士法人等の士業法人に対する報酬等
A 行政書士に対する報酬等(建築代理士の行う業務で一定のものは除く。)
B 給与等の支払いがなく、税理士報酬等のみを支払っている人
(従業員等を雇用せずに一人で個人事業を行っている人が対象となります。)
「源泉徴収」した所得税については、原則として、
税理士等に報酬等を支払った月の翌月10日までに国に納付しなければなりません。
税理士や弁護士等と顧問契約をしている場合には、注意が必要となります。
ただし、給与の支給人員が常時10人未満のときは、
「源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出して
承認を受けることにより6ヶ月分をまとめて年2回の納付とすることができます。
@1月から6月までの源泉徴収した所得税については、7月10日までに納付。
A7月から12月までの源泉徴収した所得税については、翌年1月20日までに納付。
源泉所得税の納期限に遅れてしまうと、
不納付加算税と延滞税が納付義務者に課せられる可能性があります。
納期限までに納付することを忘れずに行ってください。
(具体例)
個人飲食店:
1.正社員1名・アルバイト2名(月額給料50万円:所得税11,610円)
2.税理士の月額顧問料(月額32,400円:所得税3,063円)
(原則)平成29年6月支払分:源泉徴収の11,610円+3,063円=14,673円
→ 平成29年7月10日までに14,673円を国に納付します。
(特例)平成29年7月15日に「源泉徴収税の納期の特例の承認に関する申請書」を提出。
→ 当該申請書を提出した平成29年7月分は原則として取扱われます。
したがって、平成29年8月10日までに14,673円を国に納付します。
→ 当該申請書を提出した月の翌月(平成29年8月分)から特例の適用を受け
ることができます。
→ 平成29年8月から12月までの5ヶ月分の14,673円×5=73,365円を
平成30年1月20日までに国に納付します。
(税理士報酬等の源泉徴収の計算)
源泉徴収の対象となる報酬等は、税理士や社会保険労務士などの業務に対するものです。
なお、謝金、調査費、日当、旅費他の名目で支払われるものも源泉徴収の対象となります。
ただし、下記に該当する場合には報酬等に対して「源泉徴収」をする必要はありません。
@通常必要な範囲内の交通費、宿泊費等を支払者が直接、交通機関やホテル等に支払う場合
A弁護士等に支払う金銭等であっても、
支払者が国等に対し登記、申請をするため本来納付すべきものとされる登録免許税等に
充てるものとして支払われたことが明らかな場合
報酬等の中に消費税等の額が含まれている場合は、
原則として、消費税等の額を含めた金額を源泉徴収の対象とします。
請求書等において、報酬等の額と消費税等の額が明確に区分されている場合には、
その報酬等額のみを源泉徴収の対象とする金額として差し支えありません。
税理士報酬等の源泉徴収の計算方法
1.報酬等の額が100万円以下の場合には、報酬等の額に対して10.21%
(具体例)50万円の税理士報酬の場合 50万円×10.21%=51,050円
2.報酬等の額が100万円超の場合には、
100万円までの報酬等の額に対して10.21%、100万円超の報酬等の額に対して20.42%
(具体例)190万円の税理士報酬の場合
@100万円×10.21%=102,100円 A90万円×20.42%=183,780円
B合計額 102,100円+183,780円=285,880円
消費税の簡易課税の事業区分(飲食店)
飲食店の売上高がその年において1,000万円を超える場合には、
その年の翌々年の飲食店の売上高に対して消費税を納付しなければなりません。
消費税の納付の方法としては「原則課税」と「簡易課税」の2種類の方法があります。
■原則課税
(売上でお預かりした消費税) ー (経費として支払った消費税)
■簡易課税
(課税売上高に対する消費税) ー
(課税売上高に事業区分のみなし仕入率を乗じて計算した消費税)
※1.消費税を納付する前々年の売上高が5,000万円超の場合には適用できません。
2.適用を受けようとする年の前年までに「消費税簡易課税制度選択届出書」を
提出する必要があります。
3.当該届出書を提出した場合には、簡易課税は継続して2年間は強制適用です。
簡易課税の事業区分は、おおむね日本標準産業分類を基礎として判定しています。
日本標準産業分類は「大分類」・「中分類」・「小分類」の3区分に分類されています。
■ 飲食業は、@ 大分類 M−宿泊業、飲食サービス業
A 中分類 飲食店
B 小分類 専門料理店 他
簡易課税の事業区分は、第四種事業に該当することになります。
1.飲食店内にある酒等の自動販売機での販売
(セルフサービスを目的としたもの)は第四種事業に該当。
2.飲食のための施設を有する飲食店等が行う仕出し、出前は第四種事業に該当。
3.喫茶店における持帰り用のケーキ・珈琲豆等の仕入販売は、第二種事業に該当。
(兼業を行っている実態にあるもので、事業の区分がされている場合)
簡易課税の事業区分の詳しい内容については、以下のHPを参照してください。
国税庁HP(消費税の簡易課税の事業区分:飲食サービス業)
(具体例)
平成30年から飲食店を開始したものと仮定(従業員は3名)。
1.飲食店の売上高の推移
@ 平成30年の売上高: 950万円
A 平成31年の売上高:1,200万円
B 令和02年の売上高:1,500万円
C 令和03年の売上高:1,800万円
2.消費税の課税の有無の判断
@ 平成30年(第1期)及び平成31年(第2期)は免税事業者。
A 令和02年は平成30年の売上高が1,000万円以下のため、免税事業者。
B 令和03年は平成31年の売上高が1,000万円を超えるため、課税事業者。
3.原則課税を選択した場合
@ 令和03年の売上高に対する消費税額:1,800,000円
A 令和03年の費用に対する消費税額(経費率50%と仮定):900,000円
B 令和03年に納付する消費税額 @−A=900,000円
4.簡易課税を選択した場合 @ 課税売上高に対する消費税:1,800万円×消費税率10%=1,800,000円
A 課税売上高に事業区分のみなし仕入率を乗じて計算した消費税:
1,800万円×60%(第四種事業)×消費税率10%=1,080,000円
B 令和03年に納付する消費税額 @−A=720,000円
5.最終的な判断 簡易課税を選択した場合には、原則課税を選択したときよりも
900,000円−720,000円=180,000円、消費税の負担を軽減することができる。
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飲食店の償却資産税の対象となる資産とは?
(Q)飲食店においても、「償却資産税」という税金を支払うことになるのでしょうか。
(A)1.償却資産とは、
土地及び家屋以外の事業の用に供することができる資産で、
減価償却費を費用として計上することできるもので一定のものをいいます。
2.飲食店の償却資産の対象となる主な資産は、以下のとおりです。
@ テーブル・椅子・厨房用具・冷凍冷蔵庫・カラオケ機器 など。
A 内装・内部造作等・ルームエアコン・看版 など。
3.テナント等(家屋の所有者以外の者)が取り付けた
内装造作及び建築設備等の償却資産は、テナント等が償却資産を申告します。
償却資産の対象とならない主な資産は、以下のとおりになります。
@ 自動車税・軽自動車税の課税対象となるもの
A 無形固定資産(ソフトウェア・特許権など。)
B 繰延資産(創立費・開業費など。)
C 平成10年4月1日以後開始の事業年度に取得した償却資産で、
・耐用年数が1年未満又は取得価額10万円未満の償却資産で一定のもの
・取得価額が20万円未満の償却資産を税務会計上3年間で一括償却しているもの
小規模企業共済の加入の検討
(Q)飲食店を経営していますが、
「小規模企業共済」に加入することができますか、教えてください。
(A)「小規模企業共済」とは、小規模企業の個人事業主が事業を廃止した場合や
会社等の役員が役員を退職した場合など、第一線を退いたときに、
それまで積み立てた掛金に応じた共済金をお受け取りになれる共済制度です。
■ 飲食店の経営者の加入要件
@ 飲食店を営む場合は、常時使用する従業員の数が5人以下の個人事業主または
法人(会社など)の役員
A 小規模企業者たる個人事業主に属する共同経営者
(個人事業主1人につき2人まで)
■ 飲食店の経営者でも加入することができない場合
@ サラリーマンなどの給与所得者が副業で飲食業を行っている場合
※主たる事業が会社員であり、小規模企業者に該当しないためです。
A 直接営利を目的としない法人の役員の方。
B 「中小企業退職金共済制度(中退共)」、「建設業退職金共済制度」、
「清酒製造業退職金共済制度」、「林業退職金共済制度」の被加入者の方。
■ 掛金の取扱い
掛金月額は、1,000円〜70,000円の範囲内で自由に選択できます。
加入後も掛金月額を変更することができ、支払方法も「月払い」、「半年払い」、
「年払い」から選択できます。
■ 税法上の取扱い
小規模企業共済の掛金を支払った場合、その支払をした年分の個人の所得から
「小規模企業共済等掛金控除」として、全額を控除することができます。
■ 共済金の受取りの取扱い
共済金は、加入後6ヶ月以降における廃業や退職などの事由が生じた場合、
掛金の納付月数を基準として法令で定められた額を受取ることができます。
満65歳以上で15年以上掛金を納付した場合、
事業を継続していても共済金を受取ることができます。
共済金の受取方法は、
「一括」、「分割」、「一括と分割の併用」を選択できます。
■ 共済金の税法上の取扱い
@ 「一括」の場合には、「退職所得」として取扱います。
A 「分割」の場合には、「雑所得(公的年金等)」として取扱います。
■ 「小規模企業共済制度」の具体的な内容は、以下のHPを参照してください。
飲食店の経営者のための小規模企業共済制度
飲食店の創業計画書の記入例(日本政策金融公庫より)
■創業の動機(創業されたのは、どのような目的、動機からですか。)
@これまでの経験を生かし、自分の店を持ちたいと思い、○○地区で物件を模索して
いたところ、立地も広さもちょうど良いテナントが見つかったため。
A現勤務先の仕入業者から、多品種の酒を安価で仕入れをすることが可能となり、
事業の見通しが立ったため。
■経営者の略歴等
1.経営者の略歴
@平成○年○月 居酒屋△にて3年勤務(学生時代のアルバイト先でそのまま就職)
A平成○年○月 ダイニングキッチン○(洋風居酒屋チェ―ン)9年勤務
3年前から店長(現在の月給30万円)
B平成○年○月 退職予定(退職金70万円)
2.過去の事業経験 事業を経営していたことはない。
3.取得資格 調理師免許(平成○年○月取得)
■取扱商品・サービス
1.取扱商品サービスの内容
@昼 日替わりランチ 4種類/ドリンク・デザート付900円(売上シェア18%)
A夜 一品料理350円〜1,000円(旬の素材を利用した創作料理)
ドリンク400円〜1,000円 客単価3,500円(売上シェア82%)
2.セールスポイント
@ワイン・ビール、オリジナルカクテル等200種類のドリンクを提供する。
A隠れ家的な雰囲気のある店構えにする。
B月1回、友人の協力でアコースティックギターの生演奏会を予定している。
■取引先・取引関係等
1.販売先(回収の条件:即金回収)
一般個人(○○地区周辺の会社員、学生等)(シェア100%)
店舗は、商業ビルが立ち並ぶ路地裏に位置し、周辺には繁華街があり人通りは多い。
2.仕入先(支払の条件:末日/翌月末日回収)
@○酒店(○区○:現勤務先の仕入先)(シェア50%/掛割合100%)
A△食品梶i○区○:現勤務先の仕入先)(シェア50%/掛割合100%)
3.人件費の支払
末日/翌月末日支払い
4.従業員
@従業員(うち家族):2名(1名)
Aパート・アルバイト:4名
■お借入れの状況
○銀行○支店:車(お借入れの残高:76万円 年間返済額24万円)
■必要な資金(1,200万円)
1.設備資金(970万円)
@店舗内外外装工事(○社見積のとおり)500万円
A厨房機器(○社見積のとおり)200万円
B什器・備品類(○社見積のとおり)150万円
C保証金 120万円
2.運転資金(230万円)
@仕入 90万円
A広告費等諸経費支払 140万円
■調達の方法(1,200万円)
1.自己資金(300万円)
2.父(200万円)元金2万円×100回(無利息)
3.日本政策金融公庫(700万円)元金10万円×70回(年○.○%)
■事業の見通し(月平均)
事業計画 |
創業当初 |
軌道に乗った後 (○年○月頃) |
売上高@ |
256万円 |
332万円 |
売上原価A |
90万円 |
117万円 |
人件費 |
60万円 |
78万円 |
家賃 |
20万円 |
20万円 |
支払利息 |
2万円 |
2万円 |
その他 |
50万円 |
60万円 |
合計額B |
132万円 |
160万円 |
利益@-A-B |
34万円 |
55万円 |
■創業当初
@ 売上高(日曜定休)
昼(月〜土)900円×25席×0.8回転×26日=46万円
夜(月〜木)3,500円×25席×0.8回転×18日=126万円
(金〜土)3,500円×25席×1.2回転×18日=84万円
A 原価率35%(勤務時の経験から)
B 人件費 従業員1名20万円 専従者1名(妻)10万円
アルバイト4名 時給800円×14時間/日×26日=30万円
家賃 20万円
支払利息700万円×年○.○%÷12ヶ月=○万円 計2万円
その他光熱費、広告宣伝費等 50万円
※個人事業主の人件費は15万円(利益から報酬をもらいます。)
■軌道に乗った後
@ 売上高 創業当初の1.3倍(勤務時の経験から)
A 原価率35%(当初の原価率を採用)
B 人件費 従業員1名増 18万円増
その他諸経費 10万円増